ごあいさつ

大谷会長3.jpgごあいさつ     会長  大谷 英雄

   我が国における火災の科学的な研究は関東大震災を契機に始まったのではないかと言われています。「災害は忘れたころにやってくる」という発言で有名な寺田寅彦は明治から昭和にかけて活躍した物理学者ですが、関東大震災の調査に加わるなど火災の科学的な解明およびその防火教育への適用にも並々ならぬ興味を持っていたようです。寺田寅彦随筆集第四巻(岩波文庫)には1933年1月に出版された随筆として「火事教育」という一文が掲載されています。白木屋の火事の惨禍について市民の火災訓練の必要性を訴えられています。

  日本火災学会は1950年に創立されましたが、これには関東大震災や白木屋の火事、函館の大火などを経験し、火災の科学的解明に取り組まれていた初代会長内田祥三先生を始めとする多くの先達の自分達の研究成果を火災という災害の予防や被害の削減に役立てたいという思いが込められていたのだと思います。
  火災予防やその被害削減という問題は多岐の分野と関連があります。火災の本質を知るためには物理や化学の知識が必要ですし、火災の予防のためには住宅を初めとする社会環境に関する知識も必要です。人間の避難行動を知るためには心理学も必要ですし、煙や熱による人体への影響を知る医学的な知識も必要です。マクロな火災現象の把握には統計が必要になることもあります。日本火災学会の門戸はあらゆる分野の専門家に対して開かれています。専門家一人一人の知識では、火災による被害を減らすことには十分ではないかも知れません。学会の場で意見を交換することにより、お互いの専門分野の関わりを知り、それによって火災の科学的解明や予防・被害拡大防止技術が進展していくことに期待しています。

   また、日本火災学会ではそれらの新しい知識をセミナーや講演会を通して社会に普及させることにより、より火災に対して安全な社会づくりに貢献することも大きな使命であると考えています。

   近年は都市部で大火が起きることは稀になっていますが、一方で建物の大規模化・複雑化、あるいは危険物施設の大規模化などが進んでいます。新規の高エネルギー材料の開発も盛んに行われています。たとえば、電気自動車・パソコン等のバッテリーは大容量であればあるほど長時間の使用が可能であり、利便性は増します。しかし、万一事故が発生した場合には、従来の物以上のエネルギーを周囲に放出することになります。このような高エネルギー化・集中化が進んでいるものは枚挙に暇がないものと思います。過去に経験のない新たなタイプの火災危険は常に生まれてきているのです。火災学会としても社会環境の変化に対応した防災技術の開発に関しても継続的に貢献することが必要であると考えています。
  言うまでも無く日本火災学会が社会に貢献する活動をできるのは会員各位のご協力があればこそです。会長としましても微力を尽くす所存ですのでご協力のほど宜しくお願いします。

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